「追憶のカシュガル 進々堂世界一周」島田荘司 |
幾つかの短編集である。 京都に在住の予備校生サトルと京都大学の医学部に居る 若き御手洗潔との交流を描いた作品集である。 進々堂は京大近くにある喫茶店の名前である。 御手洗潔は世界中を放浪した後で、サトルは見知らぬ世界の 話を聞くのが好きだった。 シェフィールドの奇跡 定食屋で多量の注文を受けた障害のある店員の手助けをした際に 御手洗潔はイギリスのシェフィールドで出会った知恵遅れの青年の ことを思い出した。その青年はしかし重量挙げが得意で、いろいろな 辛い目に会いながらもついにはヨーロッパチャンピオンにまでなった。 戻り橋と悲願花 韓国を祖国に持つ姉と幼い弟は終戦間際の日本で風船爆弾の 製造に駆り出されていた。そこで日本人から酷い仕打ちに耐えながら 夢破れて祖国に戻る日を待っていた。弟が酷い怪我を負わされた時 田舎の親戚に一時引き取られたが、そこで見た群生した彼岸花は 祖国朝鮮を象徴する花であった。その根は毒があり、弟は姉が上官に 襲われたのを見た弟は上官に殺意を抱き彼岸花の根を持って機会を 伺うが上官の知ることとなり殴られる。その時に偶然に風船爆弾の 重しの砂の中に入った彼岸花の根は風船爆弾と共に遥か サンフランシスコに飛び、そこに彼岸花の群生を作ったのである。 終戦後家族ばらばらとなった弟は導かれるようにして、そのアメリカ の地に咲く彼岸花の群生地に立った。その後アメリカを旅していた 御手洗潔に出会うことになる。 それにしても読むのが辛くなる物語だった。 追憶のカシュガル ソメイヨシノが品種改良して作られた異常なほど花を咲かせる品種で あることをサトルに話すうちに御手洗潔がシルクロードの文明の十字路 カシュガルに居た時に出会った老人を思い出した。その老人が出会った 日本人が京都に咲く美しい桜のことを聞き、その老人は京都にあこがれ いつの日か行きたいと願っていた。しかし、カシュガルの地で孤独に 息を引き取ることになる。 抜群の推理力で難事件を鮮やかに解決する御手洗潔にこんな人間味 溢れた面があったとは驚いた。ますます御手洗潔のファンになった。 2014年1月22日(水)の実績は、 11434歩 でした。 平均 10889.4 合計 32406737 日数 2976 瞬間年間歩数 3974617 直近10日間平均 10373.9 |
by 1manpo_club
| 2014-01-22 12:30
| 本
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