「指名解雇」高杉良 |
後で知ることになるのだが、この小説は実話に基づいている。 パイオニアが指名解雇を行い問題となったが、それがモデルになっている。 その会社は社長と副社長が兄弟で先代の父親が築き上げた会社を 経営している。事実上の支配者は弟の副社長で兄の社長は飾りの ような存在になっていた。 主人公はその会社の人事部の課長として採用を担当している。 曲がったことが嫌いな熱血漢である。 1年ほど前に副社長が、評価の低い管理職を辞めさせるようにと 人事部長に指示が出されていたが、人事部長は放って置いた。 ところが副社長がこの件について問いただし、年内に実施するように 強く指示した。びびったのは人事部長である。副社長の天下である この会社で副社長の機嫌を損ねたら将来はなくなる。 人事部長は経営会議に諮ることなく秘密裏に対象者を各部門から リストアップさせ36人の管理職に対し事実上の指名解雇を 行なってしまう。指名された管理職は信頼してきた会社から 解雇を突きつけられ呆然とする。 人事部にいながら何も知らされていない主人公は、この事実に気付き 猛反対をする。指名解雇は絶対にあってはならないし、その前に やることがたくさんあると主張する。会社の中にも良心的な取締役も いたが副社長には誰も逆らえない。主人公は人事部長に反抗的な行動を 封鎖されてしまう。 やがてマスコミがこの指名解雇の情報をかぎつけ報道され、会社の名声 は落ちてしまう。主人公が目に付けていた優秀な学生にも内定を 断られてしまう。 社会から吊るし上げられた会社は指名された社員のグループ会社での 再就職を認める。社長が責任を取ったような形となった。副社長は 表には出ない。 頭に来た主人公はついに将来を嘱望されていたにも関わらず、その 会社を潔く辞めて、友人の経営する会社を手伝うことになったのだった。 私はこのような会社があるのだと驚いた。多かれ少なかれサラリーマンは 勤めている会社に運命を掛けている。特に定年が近くなった管理職は なおさらである。それを評価が低いという理由だけで指名解雇するのは 会社の評判を落とすばかりでなく、その会社に勤めている人間全員が 会社への信頼を無くすことになる。 この小説の中で上司に対しゴマをするイエスマンがいろいろな階層で 出てきた。会社で居残っているためには致し方ないのかも知れないが 人間として情けない。私自身は人の序列をつける人事評価という制度が 嫌いで、できるだけ管理職になるのを避けてきた。 会社には人事情報や人の噂に詳しい人物が必ずいる。私はその辺の 事情には興味がなく情報にも疎かった。 出世コースをひた走るのも人生だし、部長にならずに定年を迎える のも人生である。私は私の人生を歩んだだけで後悔はない。 会社の非常に醜い面を描いた小説である。 2010年12月12日(日)の実績は、 7353歩 でした。 平均 11141.9 合計 23342247 日数 2095 瞬間年間歩数 4066788 直近10日間平均 10242.2 |
by 1manpo_club
| 2010-12-12 12:30
| 本
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